低学年ではエースだった子が、高学年で急に目立たなくなる理由

低学年ではエースだった子が、高学年で急に目立たなくなる理由

小学2年生。ドリブルで一人抜く。親「おお」。二人抜く。親「おおお」。三人抜く。親の脳内「これは将来あるな」。帰宅する頃には、まだ県大会にも出ていないのに、なぜかプロ契約の条件まで考えている。親というのは、子どもが一試合活躍すると未来予測の精度が急に占い師レベルになる。

翌週も点を取る。コーチから「今日も良かったですね」と言われる。はい、もう確定。うちの子は才能がある。Googleで「小学生 バスケ 有望選手 身長」「サッカー ジュニア スカウト 何歳」「プロ野球 ドラフト 小学生 見に来る」を検索し始める。来ない。小学生の試合にドラフト会議の担当者は来ない。

ところが5年生くらいになる。

あれ。

抜けない。

点が入らない。

なんか昨日までモブだった子がめちゃくちゃ上手くなっている。

親「どういうこと?」

知らんがな、ではある。

小学3年生の県内最強ランキングを作っていたのは、だいたい親だけである

低学年の頃は、ちょっと足が速い、ちょっと体が大きい、ちょっとボール慣れしている。それだけでかなり無双できる。相手がまだ「ボールが来た!どうしよう!」の段階で、一人だけ「俺が行く!」なら、そりゃ強い。

そして親はその光景を見て、「この子には何かある」と思う。ある。確かに何かはある。ただ、それが将来性なのか、単に同級生より半年早く競技に慣れただけなのかは、まだ分からない。

でも親は待てない。

三試合活躍した。

はい、才能確定。

五試合活躍した。

はい、将来確定。

大会でMVPっぽい雰囲気になった。

はい、老後も安泰。

子どもはまだ九九を覚えている途中なのに、親だけ人生設計が完了している。

高学年になると、敵もちゃんとスポーツを始める

低学年では、右に行けば抜けた。速く走れば追いつかれなかった。ボールを持てば何とかなった。

ところが高学年になると、敵が急に賢くなる。

「右にしか行かないな」

「速いけど左は苦手だな」

「こいつボール持つと絶対自分で行くな」

バレる。

全部バレる。

親が三年間かけて「天才」と呼んできた必殺技が、相手チームには前半5分で解析される。

しかも相手も成長する。昨日までボールを見て追いかけていただけの子が、急にコースを切る。体を入れる。先を読む。

「お前、いつそんなこと覚えたんだよ」

知らない。向こうの親も同じことを思っている。

つまりこちらの主人公だけがレベルアップするゲームではない。敵キャラも普通に経験値を稼いでいる。しかも課金なしで。

「最近うちの子が落ちた」ではなく「全員追いついてきた」だけのことがある

4年生までそれほど目立っていなかった子が、5年生で急に上手くなることがある。

身長が伸びた。

足が速くなった。

判断が早くなった。

急に声を出すようになった。

突然、顔つきまで「俺スポーツやってます」になった。

親としては困る。

「ちょっと待って。去年まであの子、そんな感じじゃなかったよね?」

そう。去年までそんな感じじゃなかった。

でも成長とはそういうものである。

こっちは去年80点、今年も80点。向こうは去年50点、今年85点。

「うちの子、下手になった!」

いや、点数は同じ。

単に抜かれた。

この事実が一番精神にくる。

人間、自分が落ちたときより、横にいた人が突然上に行ったときのほうがショックだったりする。

親の頭の中では、過去のベストプレーだけ4K画質で保存されている

低学年で無双した子の親は、高学年になっても昔の映像を覚えている。

「あの大会で20点取ったよね」

「あのとき三人抜いたよね」

「あのチーム相手にホームラン打ったよね」

子ども「いつの話?」

親「3年前」

子どもにとって3年前は人生の半分近い。

親にとっては先週くらいの感覚である。

ここで「昔はできたのに」が始まる。

昔は抜けた。

昔は点を取れた。

昔はずっと出ていた。

昔はコーチにも褒められていた。

そのうち「昔はかわいかった」にまで話が脱線する。

それはスポーツ関係ない。

低学年エースの最大の敵は、実は「ずっと俺がやれば勝てた」という成功体験だったりする

低学年でボールを持てば全部解決できた子は、そもそも他のやり方を覚える必要がなかった。

パス?

いや俺が行く。

味方を使う?

いや俺が行く。

周りを見る?

俺が行ったあと見ればいい。

守備のカバー?

とりあえず俺が行く。

万能感がすごい。

本人だけ戦国武将である。

ところが高学年になると、「俺が行く」だけでは通用しない。

「俺が行く」

止められる。

「もう一回俺が行く」

また止められる。

「今度こそ俺が行く」

コーチ「パスしろ!」

本人「なんで?」

親「なんで?」

コーチ「なんでがなんで?」

体育館の空気が完成する。

ここで初めて、周りを見る、味方を使う、ボールを持っていないときに動く、相手によってプレーを変える、という競技の本体に入っていく。

低学年はチュートリアルだった。

親だけラスボス倒した気になっていた。

目立たなくなったのではなく、地味に上手くなっている場合が一番分かりにくい

高学年になると、「うまいプレー」が地味になる。

無理に突っ込まない。

一回戻す。

味方を使う。

危ない場所を先に埋める。

自分が点を取るより、味方をフリーにする。

これ、観客席から見ると大変困る。

映えない。

得点板にも出ない。

動画の切り抜きにも向かない。

祖父母にLINEで送っても「どれがうちの孫?」となる。

親としては、「今日なんか全然目立ってなかったな」と思う。

でもコーチからすると、

「今日よかったな」

となる。

親「どこが?」

コーチ「全部」

親「全部?」

コーチ「全部」

親、納得できない。

得点欄に数字がないから。

親のスポーツ評価システムは、初期設定だと「得点・ゴール・ヒット」しかインストールされていない。

一番危ないのは、子どもより親が“元エース”を引退できないことだ

本人は意外と分かっている。

「最近○○のほうが上手い」

「○○めっちゃ速くなった」

「今日は俺ダメだった」

子どもは案外、現実を見る。

そこへ親が登場する。

「いや、お前だって昔は一番だったじゃん」

いらない援護射撃。

本人は2026年を生きているのに、親だけ2023年シーズンの順位表を持ってくる。

さらに出場時間が減ると、親の脳内捜査本部が立ち上がる。

「コーチに嫌われてる?」

「○○君の親が役員だから?」

「もしかしてあの家、コーチと仲いい?」

捜査が始まる。

証拠はない。

でも捜査は進む。

最終的に夫婦会議で「ちょっとおかしいよね」になる。

子ども「普通に俺がミスしたからだよ」

事件解決。

親は試合を見ているようで、半分くらい自分の子しか見ていない

これもスポ少あるあるである。

試合後。

親A「今日うちの子全然だったわ」

親B「え?守備めっちゃ良かったじゃん」

親A「そう?」

見ていない。

自分の子を見ていたのに見ていない。

正確には、自分の子の「活躍」しか見ていない。

シュートした。

打った。

ゴールした。

抜いた。

ここだけHD画質。

守備、カバー、声掛け、味方へのパスは低画質。

親の目にもデータ節約モードがある。

だから高学年でプレーが複雑になるほど、「目立たない=成長していない」という誤判定が増える。

そして突然、親は練習量で解決しようとする

最近抜けない。

よし、追加練習だ。

出場時間が減った。

よし、スクール追加だ。

点が取れない。

よし、自主練だ。

父「朝練しよう」

子「何時?」

父「6時」

子「学校あるよ」

父「だから6時」

理屈が強い。

そして父親も最初の三日くらいは気合が入っている。

四日目。

父「今日は雨だから休もう」

子「晴れてるけど」

父「地面が湿ってる」

五日目。

父、起きない。

朝練終了。

成長したのは目覚まし時計への耐性だけである。

本当に見るべきなのは「前より何ができるようになったか」だ

高学年で目立たなくなったとき、昔より点が減ったかではなく、昔できなかったことができるようになったかを見る。

以前なら突っ込んでいた場面でパスを選べた。

ミスしたあと切り替えられた。

味方に声をかけられた。

守備で先に動けた。

相手を見てプレーを変えられた。

こういうものは、新聞の得点欄には出ない。

残念ながら「本日のナイス判断 7回」と電光掲示板にも表示されない。

だから親が見つけないといけない。

「今日は何点取った?」だけだと、子どもの成長を数字の出る場所だけで測ることになる。

まあ、試合後に「今日何が良かった?」と聞いても、

「別に」

と言われることはある。

小学生男子の「別に」は、意味ではない。

ほぼ効果音である。

親の仕事は、エースの座を守ることではない

昔エースだった子が高学年で目立たなくなる。

別に珍しい悲劇ではない。

そこで終わる子もいれば、そこから別の強みを作る子もいる。

守備が武器になる。

パスが上手くなる。

声を出せるようになる。

相手を見るようになる。

ポジションが変わる。

役割が変わる。

つまり、「昔と同じ形で活躍すること」を諦めた瞬間に、別の選手になれることがある。

親ができるのは「昔はエースだったのに」と言い続けることではない。

それを毎回言っていると、子どもより先に親が思い出補正の世界から帰ってこられなくなる。

親も余裕がないと、子どもの変化より配車表を見てしまう

ただ、ここは少し現実的な話もある。

高学年になると試合も遠征も増え、保護者側は出欠、配車、車出し、持ち物、集合時間、変更連絡で普通に疲れる。

子どものプレーをじっくり見るつもりで会場に来たのに、試合開始10分前まで、

「帰り一人増えました」

「○○さん現地集合です」

「荷物誰が積みます?」

とスマホを見ている。

試合が始まった瞬間、

「え、もう前半終わるの?」

スポ少保護者の時間はワープする。

ClubCore(倶楽部コア)も、こうした出欠や予定、配車などの情報をLINEの会話だけに埋めず、チーム運営を整理するために作っている。ツールを入れれば子どもが急にエースへ戻るわけではない。そこまでできたらClubCoreではなく魔法Coreである。ただ、親が連絡調整で消耗する時間を減らせれば、「うちの子、今日何点だった?」以外の部分を見る余裕は少し増える。

低学年ではエースだった。

高学年では目立たなくなった。

それでいい。

小学3年生のピークを一生守る競技ではない。

抜かれる。

追いつかれる。

失敗する。

役割が変わる。

そしてまた伸びる。

その途中で親が「昔はすごかった」を連呼すると、子どもの成長ストーリーに突然、回想シーンばかり入ってくる。

次の試合で、昔なら20点取っていた子が6点しか取らなかったら、まず得点板から目を離してみるといい。

その6点以外の時間に何をしていたか。

そこを見る。

それでも何もしていなかったら?

その日は普通に調子が悪かったのだ。

毎試合、深い成長物語が起きているわけではない。

そこまでスポ少はNetflixではない。

あなたのチームではどうですか?

スポ少・少年団・クラブチームで実際にあった出来事や、保護者として感じていることを匿名で教えてください。ClubCoreブログの記事づくりの参考にさせていただく場合があります。

※個人名・チーム名・学校名など、個人や団体を特定できる情報は入力しないでください。

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