スポ少で“親がうまくやりすぎる子”は得なのか、損なのか|「親のおかげ」にされる子どもの実力

スポ少で“親がうまくやりすぎる子”は得なのか、損なのか|「親のおかげ」にされる子どもの実力

「もう俺のこと、監督に聞かないで」――親が一歩引くきっかけは、意外とこんな一言です

例えば、こんな場面です。

ある子が試合で思うように出られなかった。親から見れば、練習でもそれほど悪くない。最近はシュートも入っている。それなのに、その日は途中からほとんどベンチだった。

父親は普段からチームによく関わっている。車出しもするし、大会の準備も手伝う。監督とも普通に話せる関係です。

試合後、体育館の片付けが終わるころに監督へ聞く。

「今日、あいつ何か悪かったですか?」

監督は別に嫌な顔もしない。

「悪いというより、今日はディフェンスの戻りですね。そこがもう少しできれば」

父親としては聞けてよかったと思う。

帰りの車で息子に言います。

「監督、今日出なかったのは戻りだって言ってたぞ。そこ直せばいいんじゃない?」

ところが子どもは喜ばない。

少し黙ったあと、

「そういうの、もう聞かなくていいから」

と言う。

父親としては引っかかります。

「なんで? お前が試合に出たいって言ってたから聞いたんだろ」

すると子どもが言う。

「自分で聞くから」

たったそれだけです。

でも私は、スポ少で親がどこまで入るべきかを考えるなら、この一言はかなり重いと思っています。

親としては助けているつもりなんです。

監督との関係も悪くない。だから聞ける。子どもが困っているなら情報を取ってきてあげる。

でも子ども側からすると、自分と監督の間に親が入ってきている。

そして、ここからが今回の話です。

スポ少では「親がチームでうまくやれる子は得だ」と思われがちです。

私は、半分はそうかもしれないけれど、半分は逆だと思っています。

親が監督から信用され、役員もやり、配車も率先し、チーム内で存在感を持つほど、子どもには別の問題が生まれます。

何をやっても「親のおかげ」という説明がついて回るようになる。

これは、親が思っている以上に面倒です。

親が何もしていない子は、活躍すればそのまま「上手い子」になれます

二人の子が同じ試合で10点取ったとします。

一人の家庭は、送迎だけ。監督ともほとんど話さない。役員でもない。

その子が活躍したら、

「今日すごかったね」

で終わります。

ところが、もう一人のお父さんは毎週のように車を出す。監督ともよく話す。お母さんは役員。遠征や大会ではいつもどちらかがいる。

その子が10点取った。

すると、ときどき余計な一言がつく。

「まあ、あそこは親もかなりやってるからね」

おかしな話です。

シュートを決めたのは子どもです。車を出したお父さんではない。

ディフェンスしたのも子ども。役員のお母さんでもない。

それでも親の存在感が大きくなると、子どもの評価まで親とのセットで語られるようになります。

しかも、これは活躍したときだけではありません。

ミスをしたのに試合に出続ければ、

「普通だったら代えられてない?」

ベンチからスタメンになれば、

「最近お父さん、監督とよく話してるもんね」

大会のメンバーに選ばれれば、

「まあ、あの家は役員もやってるし」

本当に親の影響があったのかは分かりません。

でも、一度「親が監督に近い家庭」というラベルが付くと、子どもの結果から親を引き算して見る人が出てくる。

これは結構残酷です。

親が信用を貯めることと、子どもが評価されることは別なのに、外からは同じ通帳に見えます

車が一台足りない。

「今日、もう一人乗せてもらえませんか」

「大丈夫ですよ」

大会の集合が早くなった。

「すみません、鍵開けお願いできますか」

「分かりました」

役員が足りない。

「今年お願いできませんか」

「誰もいなければやります」

こういう親は、チームから信用されます。

当然だと思います。

連絡すれば返事が来る。頼んだことを忘れない。急なことにも対応してくれる。

監督だって人間なので、「○○さんなら大丈夫」という安心感は生まれるでしょう。

でも、その家庭の子どもが試合に出た瞬間、話がややこしくなる。

親が信用を貯めることと、子どもが評価されることは別なのに、外からは同じ通帳に入っているように見えるからです。

これが「親がうまくやりすぎる子」の一番厄介なところです。

親が何もしなければ、「親のおかげ」とは言われない。

親が頑張れば頑張るほど、子どもは自分の実力だけで評価されたことを証明しづらくなる。

かなり皮肉な構造です。

差し入れより厄介なのは、差し入れを渡すときに生まれる数分間です

監督に飲み物を渡す。

それだけで試合に出られるなんて話なら、さすがに単純すぎます。

私が気になるのは、物ではありません。

そのときに生まれる会話です。

練習が終わり、ほとんどの家庭が帰り始めている。

「今日もありがとうございました」

「いやいや。○○、最近良くなってますよ」

「本当ですか。家でも結構やっていて」

そこから少し話す。

別に選手起用をお願いしているわけではありません。

ただの会話です。

でも、こういう数分間が毎週積み上がると、監督はその家庭のことをよく知るようになります。

最近本人が何を考えているのか。

家で練習しているのか。

少し体調を崩していたのか。

親がどんな考えなのか。

そして少し離れたところにいる保護者から見えるのは、その中身ではありません。

「また監督と話してる」

という光景だけです。

翌週、その子がスタメンになれば、

「ほらね」

となる。

実際に因果関係がなくてもです。

だからスポ少の「贔屓」は、実際の贔屓だけで発生するわけではありません。

見えない会話と、見える結果がセットになることで、贔屓のストーリーが出来上がる。

ここはかなり大きいと思います。

親がうまくやりすぎると、今度は「見返りを求めていない証明」が必要になります

外から見ると、協力的な家庭は得をしているように見えます。

でも中にいる本人は、意外と自由ではありません。

例えば、ずっと役員をしていた家庭の子が、ある時期から試合にほとんど出られなくなったとします。

親としては気になる。

でも聞きづらい。

「これだけ役員やってるんだから、うちの子を出してくれって意味に取られないかな」

役員を辞めたくなっても、また気になる。

「子どもが出られなくなったから辞めたと思われないかな」

逆に子どもがレギュラーになったら、今度はもっと辞めづらい。

「レギュラーになった途端、仕事をやらなくなった」

と思われたくない。

つまり、一度「よくやってくれる家庭」というポジションに入ると、善意だったはずの仕事が少しずつ身分のようになっていきます。

これもスポ少では結構しんどいところです。

最初は一回だけ車を出した。

次は「今回もお願いできますか」になる。

その次からは、聞かれる前から自分の名前が候補に入っている。

善意は繰り返すと、周囲の中で「できる人」から「やる人」に変わります。

その家庭の子が主力だったら、さらに断りにくい。

得しているように見える家庭ほど、実は降りるタイミングを失っていることがあります。

親が一度引いたら、子どもと監督の関係が変わった――ここが一番面白いところです

先ほどの「もう監督に聞かなくていい」と言った子の話に戻ります。

ここで親が、

「何言ってるんだ。お前のためにやってるんだぞ」

と押し切ることもできます。

でも、あえてやめる。

次の試合でも出場時間は短かった。

帰りの車でも、親からは何も聞かない。

「今日どうだった?」

くらいで終わらせる。

子どもが何も言わなければ、それ以上聞かない。

しばらくすると、練習後に子ども自身が監督のところへ行く。

親は少し離れたところにいる。

何を話しているか聞こえない。

車に乗っても、親は聞かない。

すると子どものほうから、

「もっとディフェンスやれって」

と言ってくる。

ここ、ものすごく大きな違いがあります。

親が監督から取ってきた答えと、本人が自分で取りに行った答え。

内容が同じ「ディフェンス」でも、意味は全く違います。

前者は、

「親から言われた課題」。

後者は、

「自分が監督から聞いた課題」。

ここで初めて、監督と子どもの間に直接の関係ができます。

そして親は少し寂しい。

これまで自分が間に入っていた場所から、自分がいなくても話が進んでいるからです。

でも、たぶんそれでいい。

親が引くというのは、子どもを放っておくことではありません。親がいなくても成立する関係を一つずつ本人に返していくことです。

私は、この「引く」は車出しを一回減らすより、ずっと価値があると思っています。

一番危ないのは、親が家でも「コーチの代理人」になってしまうことです

監督と話せる親ほど、いろいろな情報が入ります。

「最近○○、良くなっていますよ」

と言われれば嬉しい。

帰りの車で、

「監督、お前のこと評価してたぞ」

と伝える。

悪いことではありません。

でも、それが少しずつ変わることがあります。

「今日声出てなかっただろ。あれじゃ監督も使いづらいぞ」

「○○君、最近かなり評価されてるみたいだぞ」

「監督がディフェンスって言ってたんだから、もっとやれよ」

親はアドバイスのつもりです。

でも子どもからすると、体育館を出ても監督がついてくるような状態になります。

練習で評価される。

車でも評価される。

家でも評価される。

これでは逃げ場がありません。

スポ少では、監督と親の距離ばかり問題にされます。

私はむしろ、親と監督の距離が近くなった結果、親と子どもの距離までおかしくなることのほうが怖いと思っています。

本来、試合で全然ダメだった日に、

「今日はダメだったな。腹減ったな。何食べる?」

で終われるのが親です。

それなのに、

「今日の2クォーターのあのディフェンスだけど」

と車内反省会を始める。

チームに入りすぎた親ほど、これをやりやすくなります。

子どもにとっての「チームの外側」だった親が、いつの間にかチーム側の人間になる。

これは、親が監督と仲良くなることより注意したほうがいい問題です。

逆に、「親が何もしない家庭だから公平」というわけでもありません

ここは勘違いしたくないところです。

親がチームに関わらなければ子どもが純粋に実力だけで評価される、という保証もありません。

それに、スポ少は実際に誰かの仕事で動いています。

だから「目立つと損だから車出しをやめよう」では話が逆です。

私なら、引く場所を変えます。

車を出すのは親の仕事。

役員を引き受けるのも親の判断。

でも、

「どうしたら試合に出られますか」

を聞くのは、年齢や状況によっては本人の仕事にしていく。

親が引くべきなのは、チーム運営ではなく、子ども自身ができるようになった領域です。

ここをごちゃ混ぜにすると、「親はどこまで関わるべきか」という話が永遠に答えの出ない精神論になります。

「あの子は親のおかげ」と思ったとき、親ではなく評価基準を見たほうがいい

逆の立場についても書いておきます。

監督とよく話す家庭の子が試合に出ている。

役員家庭の子がレギュラー。

そういう状況を見れば、疑いたくなることはあります。

本当に親との関係が影響している可能性もゼロとは言えません。

ただ、

「親が監督と仲がいい」

「子どもが試合に出ている」

この二つだけでは、贔屓の証明にはなりません。

見るなら別のところです。

同じようなミスをしたとき、扱いが継続的に違うのか。

子ども本人が「何を改善すればもっと試合に出られますか」と聞いたとき、具体的な課題を言ってもらえるのか。

その課題に取り組んだあと、評価が動くのか。

こっちを見る。

監督と何分話した。

誰が差し入れした。

遠征で誰が監督の近くにいた。

そこを追い始めると終わりません。

子どものスポーツを見に来たはずの親が、いつの間にか大人の人間関係を観戦するようになります。

そうなったら、一回視線をコートに戻したほうがいいです。

「○○さんに聞かないと分からない」が、親の立場まで強くしてしまう

ClubCore(倶楽部コア)を作る中で減らしたいと思っているのも、こういう部分です。

役員だから予定を知っている。

配車係だから全家庭の事情を知っている。

監督とよく話す家庭だから変更を先に知っている。

こうなると、仕事をたくさんする親ほど情報も集まり、結果としてチーム内で存在感が大きくなります。

本人が偉くなろうとしていなくてもです。

だったら、人間関係に載せる必要のない情報くらいは仕組みに逃がしたほうがいい。

予定は同じ場所で見る。

出欠もそこで分かる。

配車も一人の担当者の頭と個別LINEだけに置かない。

ClubCoreで監督の好き嫌いや親同士の嫉妬をなくすことはできません。

そこまでシステムに期待するのは無理です。

でも、

「○○さんに聞かないと分からない」

を減らすことはできる。

情報を持っている親と、チームから信頼されている親は、本来別です。

そこまで一緒にしなくていいと思っています。

親がうまくやりすぎる子は得なのか。私なら「得に見えるほど、引き際が難しくなる」と答えます

親が監督と仲がいい。

車も出す。

役員もやる。

連絡も早い。

それ自体は何も悪くありません。

むしろチームからすれば、ありがたい家庭でしょう。

でも、親の存在感が大きくなればなるほど、子どもには余計な説明がつきます。

活躍すれば、

「親がうまくやってるから」

試合に出れば、

「監督と仲いいから」

親が役員を辞めれば、

「子どもの扱いが変わったから?」

親が何をしても、子どもと結びつけて見られる。

だから私は、親が目立たないようにしたほうがいいとは思いません。

そんなことを気にしながらスポ少をやるのもしんどいです。

車は出せるなら出せばいい。

役員もできるならやればいい。

監督とも普通に話せばいい。

ただ、一つだけ意識しておいたほうがいい。

子どもが自分でできるようになったことまで、親が上手にやってしまわないことです。

監督に聞く。

自分の課題を知る。

失敗した理由を考える。

自分の立場を作る。

そこまで親が先回りすると、本当に「親のおかげ」になってしまいます。

親がうまくやることのゴールは、子どもの道を全部整えることではありません。

むしろ逆です。

あるところまで整えたら、本人が自分で歩けるように、親がそこから消えていく。

試合後、子どもが監督のところへ自分から歩いていく。

親は少し離れた場所で待っている。

何を話したか、こちらからは聞かない。

車に乗ってしばらくして、本人が話したくなったら話す。

たぶん、親がスポ少で一番うまくやれた瞬間というのは、監督と一番仲良くなったときではありません。

自分が間に入らなくても、子どもとチームの関係がちゃんと回り始めたときです。

あなたのチームではどうですか?

スポ少・少年団・クラブチームで実際にあった出来事や、保護者として感じていることを匿名で教えてください。ClubCoreブログの記事づくりの参考にさせていただく場合があります。

※個人名・チーム名・学校名など、個人や団体を特定できる情報は入力しないでください。

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