スポ少で一番扱いが難しいのは「そこそこ上手い子」なのかもしれない

スポ少で一番扱いが難しいのは「そこそこ上手い子」なのかもしれない

「今日、俺スタメンかな」

知らん。

親に聞くな。

こっちは監督のLINEすら知らん。

試合会場へ向かう車の中で、子どもは平気でこういう質問をしてくる。

しかも絶妙に答えづらい子に限って聞いてくる。

圧倒的エースなら、

「まあ出るやろ」

で終わる。

まだ試合にあまり出ない子なら、

「今日は出られるといいな」

で終わる。

問題は、そこそこ上手い子である。

出そう。

でも出ないかもしれない。

いや、出るだろう。

でも相手強いしな。

昨日ちょっと怒られてたしな。

でも練習では良かったしな。

親の脳内でスポーツ新聞が号外を出し始める。

「そこそこ上手い」は、実力ではなく親の精神状態を表す言葉である

そこそこ上手い子の特徴。

たまにめちゃくちゃ活躍する。

これが良くない。

一回でも無双すると、親の記憶はそこで止まる。

先月の練習試合で12点取った。

親の中では永久保存版である。

その後3試合で合計2点でも関係ない。

「あのとき12点取ってたし」

スポ少の親は過去最高値で我が子を評価する。

株なら完全に高値掴みである。

本人が普通に戻っても、親の評価額だけ戻らない。

しかも家で動画を見る。

シュートが入る。

巻き戻す。

もう一回入る。

当然である。

動画だから。

なのに3回見ると、

「やっぱ上手いな」

となる。

いや、3本決めたんじゃない。

1本を3回見ただけだ。

試合中、そこそこ上手い子の親だけ別の競技をしている

試合開始。

子どもはベンチ。

親は応援席。

だが実際には、試合を見ていない。

ベンチを見ている。

監督が立つ。

「来たか?」

違う。

水を飲んだだけ。

コーチが選手を呼ぶ。

「来た!」

違う。

隣の子。

親の心拍数だけ試合に出場している。

やっと我が子が呼ばれる。

残り2分。

遅い。

親の中ではもう第4クォーターではない。

抗議文作成時間である。

「いや、もう少し早く出しても……」

ここで夫婦の片方が言う。

「でも今日あんまり良くなかったよ」

最悪である。

家庭内に敵がいた。

帰りの車で緊急国会が開かれる。

他人の子のミスを見て、ほんの少し元気になる自分が嫌になる

そこそこ上手い子の親には、誰にも言えない瞬間がある。

同じポジションの子がミスした。

「あっ」

と思う。

その「あっ」には約17種類の感情が入っている。

心配。

応援。

驚き。

そして、ほんの少しの期待。

「交代あるか?」

人間の汚い部分が体育館の照明に照らされる。

もちろん口では言う。

「ドンマイ!」

心では言う。

「監督、今です」

最低である。

でも安心してほしい。

隣の親もたぶん似たようなことを考えている。

みんな善人の顔をして座っているが、頭の中ではドラフト会議が開催されている。

親はすぐ「監督のお気に入り説」を立ち上げる

自分の子が出ない。

理由が分からない。

すると親の脳は、ものすごい速度で仮説を作る。

「監督、あの子のお父さんと仲いいからな」

「役員やってるから?」

「この前、遠征で車出してたし」

「うちはお菓子差し入れてないから?」

最後のほう、もう部活ではない。

江戸幕府である。

賄賂制度が始まっている。

しかも一度疑い始めると、全部怪しく見える。

監督がその子の頭をポンとする。

「ほら」

何が「ほら」なのか。

監督が笑って話す。

「やっぱり」

何が「やっぱり」なのか。

そのうち、

「この前、駐車場で5分くらい話してた」

まで証拠になる。

刑事でもそこまで追わない。

「もっと頑張れ」が便利すぎて、親は使いすぎる

子どもが言う。

「今日、あんまり出られなかった」

親は困る。

そして便利な言葉を出す。

「もっと頑張れ」

何を?

子どももたぶん思っている。

もっと走るのか。

もっとシュートを打つのか。

もっと声を出すのか。

それとも監督の家の方向に毎朝一礼するのか。

具体性ゼロである。

「もっと頑張れ」はスポ少界の万能調味料だ。

何にかけても一応それっぽくなる。

ただし味は毎回同じである。

親がコーチになり始めると、家が急に息苦しくなる

試合後。

親が動画を再生する。

「ここ見て」

子どもは嫌な予感しかしない。

「このときさ、もっと中に入れたよね」

知らん。

その瞬間プレーしてたのは子どもである。

ソファに座ってスロー再生している人間ではない。

さらに親は止める。

戻す。

止める。

拡大する。

「ここ!」

完全にVARである。

家庭にVARはいらない。

晩ご飯の前に判定覆すな。

子どもはポテトを食べたいだけである。

そこそこ上手い子は、褒めるにも怒るにも微妙すぎる

めちゃくちゃ上手いなら、

「すごかったな」

と言える。

まだこれからなら、

「少しずつだな」

と言える。

そこそこ上手い子は違う。

良かった。

でも惜しい。

活躍した。

でもミスもした。

スタメンだった。

でも後半下げられた。

親の感想が全部「ただし」で終わる。

「今日よかったな。ただ……」

この「ただ」が出た瞬間、子どもの顔が死ぬ。

褒められたと思ったら延長戦が始まるからだ。

スポ少の親は褒めるときまでロスタイムが長い。

一番怖いのは、親が子どもよりレギュラー争いに夢中になることだ

子どもは帰宅。

風呂。

ゲーム。

YouTube。

翌朝にはもう普通。

親は違う。

昨日の交代がまだ納得できない。

昼休みに思い出す。

「やっぱ早かったよな、交代」

仕事しろ。

夕方また思い出す。

「あのファウルなかったらな」

本人はもう忘れている。

親だけ大会が続いている。

しかも次の練習日、体育館に入った瞬間にライバルの子を見る。

「あ、来てる」

来るだろ。

チームメイトだから。

なぜ欠席を期待した。

親の貢献度と出場時間を勝手に交換レートにしてはいけない

配車した。

当番した。

朝早く起きた。

遠征も行った。

役員もやった。

ここまでやると、どこかで思う。

「うち、結構チームに貢献してるよな」

ここまではいい。

問題はその次。

「だからもうちょっと出してくれても……」

ポイント制ではない。

配車5回で出場時間10分追加、みたいなサービスは存在しない。

もし存在したら、お父さん全員ハイエース買う。

あと監督の家の前が渋滞する。

出場時間を聞く子に、一番してはいけない答えは親の妄想である

「なんで俺出られなかったんだろ」

子どもが言う。

このとき親が言いがちなのが、

「監督の好みじゃない?」

やめたほうがいい。

子どもの中に急に「政治」が入る。

昨日まで、

「もっと上手くなろう」

だったのに、

翌日から、

「どうせお気に入りが出るし」

になる。

それはもったいない。

監督が本当に変な場合は別として、まずは本人に聞けばいい。

「自分では何が足りなかったと思う?」

すると子どもが言う。

「分からん」

まあ、そうなる。

小学生に自己分析を求めすぎた。

人事面談ではない。

ClubCoreで管理できても、親の脳内順位表までは管理できない

スポ少は競技だけでも大変なのに、配車、出欠、当番、持ち物、予定変更まで全部LINEで流れてくる。

試合前日。

「明日、集合7時です」

数分後。

「すみません、集合場所どこでしたっけ?」

その3個上に書いてある。

LINEを読むという競技でも予選落ちしている。

さらに、

「車出せます」

「やっぱり無理です」

「2人乗れます」

「弟も乗ります」

「帰りだけお願いします」

配車担当の頭の中では、もはやスポ少ではなく航空管制が行われている。

ClubCore(倶楽部コア)は、こういう出欠、配車、予定、持ち物などをLINEの川から救出するために使える。

ただし一つだけ、まだ管理できないものがある。

「あの子より、うちの子のほうが上手い気がする」

これである。

たぶん世界中のSaaSでも無理だ。

データベースに入れた瞬間、炎上する。

結局、そこそこ上手い子は一番ドラマが多い

圧倒的エースは分かりやすい。

初心者も分かりやすい。

そこそこ上手い子だけ、毎週ストーリーが変わる。

今日はスタメン。

来週はベンチ。

その次は活躍。

次は怒られる。

親も上がる。

下がる。

喜ぶ。

疑う。

動画を見る。

巻き戻す。

また見る。

そして最終的に、

「まあ、本人が楽しいならいいか」

と言う。

最初からそれでよかった。

でも、それを最初からできないのがスポ少の親である。

次の試合もたぶん同じだ。

子どもが聞く。

「今日、俺スタメンかな」

だから知らん。

監督に聞け。

いや、監督にも聞くな。

とりあえずアップしてこい。

あなたのチームではどうですか?

スポ少・少年団・クラブチームで実際にあった出来事や、保護者として感じていることを匿名で教えてください。ClubCoreブログの記事づくりの参考にさせていただく場合があります。

※個人名・チーム名・学校名など、個人や団体を特定できる情報は入力しないでください。

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