スポ少の配車で「上手い子だけ同じ車」になると何が起きる?気づけば一軍車と二軍車が爆誕する

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日曜の朝7時。試合へ向かう子どもたちが駐車場に集まり、配車表を見て車へ乗り込んでいく。すると、なぜか今日もスタメンの四人が同じミニバンに吸い込まれていく。先週も一緒。先々週も一緒。その車だけ選手層が厚すぎて、途中のサービスエリアで練習試合を申し込まれても普通に戦えそうである。
残った車には、試合にあまり出ない子たちが集合している。こちらも別に誰かが決めたわけではない。それなのに、見事なまでにメンバーが分かれている。「赤組」「白組」ならまだかわいい。何回も続けば、親の脳内では勝手に「一軍号」と「育成号」という車名が付く。もちろん正式名称ではないので、車検証には書いていない。
この問題の結論はかなり単純だ。上手い子同士が仲良くすることが悪いのではない。「実力」「仲良し」「親同士の距離」「配車」が毎回同じ組み合わせになることがまずい。たかが車なのに、気づけば配車表がチームの最新序列表になってしまうからだ。
A.配車表が、誰も頼んでいないレギュラー発表になる
最初の一回なら何も起きない。「たまたま」で終わる。二回目もまあ偶然である。三回、四回、五回と続くと話が変わる。スタメン組が毎回同じ車、控え組も毎回同じ車となれば、もはや偶然のほうが相当頑張っている。そろそろ偶然にも有給休暇を与えたほうがいい。
大人は「ただの移動じゃん」と思うかもしれないが、子どもはこういうところをよく見ている。「またあの四人一緒じゃん」「俺らまたこっちか」。誰も「君は二軍だ」と言っていないのに、毎週日曜日の朝に無言のクラス分けが行われる。しかも先生不在、通知表なし、異議申し立て窓口なしという、なかなか豪快な制度である。
車内では試合の話もするし、昨日の練習の話もする。くだらないことで笑って、帰りには反省会まで始まる。その時間が毎回同じメンバーなら、当然さらに仲良くなる。そして「試合によく出るメンバー」と「いつも一緒にいるメンバー」が完全一致していく。ここまで来ると車は送迎手段ではなく、走る部室である。
問題は仲良くなることではない。その外にいる子から見たとき、「あの子たちは最初から一つのグループなんだ」と見え始めることだ。コーチが作った序列ではなくても、子どもの目には序列に見える。大人の「そんなつもりはなかった」は、この手の問題ではだいたい後から登場する。火事のあとに現れる消火器くらいのタイミングである。
B.その車だけ、なぜか情報量までプレミアムプランになる
さらに面倒なのが、同じ車に乗る親まで固定されることだ。子どもが試合会場でアップしている間、親は車の中で一時間近く一緒にいる。そこで無言で前だけ見続ける家庭はそう多くない。「次の大会どうなるんだろうね」「最近あの練習増えたよね」「コーチ、こんなこと言ってたよ」。こうして誰も招集していない保護者会議が高速道路上で開幕する。
議長はいない。書記もいない。議事録もない。なのに妙に情報だけ増える。翌週になると体育館で「あれ、次って集合早くなるんだよね?」と誰かが言う。別の親が「え、そうなの?」と聞くと、「この前、車で聞いた」。この瞬間、「車で聞いた」という日本スポ少界でもかなり怪しい情報伝達システムが完成する。
もちろん単なる雑談なら何の問題もない。しかし、毎回その車に乗っているのが中心選手の家庭ばかりだと、外側からは「中心の親だけ先に知っている」に見える。実際にはコンビニで肉まんを買うかどうかしか話していなかったとしても、メンバー構成だけで秘密会議感が出る。肉まんも突然、機密文書みたいな扱いを受ける。
こうなると腹が立つ理由は「私はその車に乗れなかった」ではない。「自分の知らないところに、もう一つのチームがあるように感じる」からだ。子どもの実力差は受け入れられても、情報や親の扱いまでセットで差が付いているように見えると、人間は急にモヤモヤする。試合なら得点板があるので負けても分かりやすいが、保護者社会には得点板がない。だから全員が勝手に心の中で採点を始める。これが非常に面倒くさい。
C.「あの子は主力だから」が配車にまで進出すると、担当者が詰む
もっと厄介なのは、配車を変更しようとしたときだ。「今回は組み合わせを変えます」と担当者が出す。すると「○○たちはいつも一緒だから、この車がいいみたい」と希望が入る。子どもが友達と一緒に乗りたいのは当然である。ただ、その希望を全部聞いていたら配車表ではなくディズニーランドの座席予約になる。
「○○ちゃんはあの子と一緒がいい」「帰りだけ別がいい」「この車は酔う」「あの車なら大丈夫」「できれば前の席」。こうなると配車担当の仕事は送迎調整ではない。高級旅館の女将である。「お客様、本日はどちらのお車をご希望でしょうか」。残念ながら宿泊代は一円も入ってこない。
しかも相手が上手い子の家庭だと、余計な気遣いまで乗ってくる。「変に断って親同士が微妙になったらどうしよう」「子ども同士まで気まずくならないかな」。逆に控えの子の家庭には普通に変更をお願いできたりする。誰かが意地悪をしているわけではない。全員が空気を読みすぎた結果、上手い子の希望だけがなぜか高速道路のETCレーン並みにスイスイ通過する。
そして恐ろしいことに、上手い子の親も別にそれを望んでいない場合がある。「別の車でいいんだけど、いつもこうなってるから……」。つまり配車担当も困っている、周囲もモヤモヤしている、本人も特に希望していない。それなのに固定配車だけが元気に生き残る。スポ少には時々、誰一人として飼いたいと言っていないのに全員で餌を与えている謎の生き物がいる。
解決策は「上手い子を分散」ではなく、「実力を配車の材料にしない」こと
ではスタメンを一台ずつバラバラに配置すればいいのか。そこまでやると今度は「この車には得点力が足りません」みたいな話になってくる。車は試合をしない。高速道路でゾーンディフェンスもしない。必要なのは選手戦力の均等化ではなく、配車と競技上の序列を切り離すことである。
決める順番はシンプルでいい。まず安全に乗れる人数、送迎する場所、行き帰りの予定、兄弟など各家庭の事情を優先する。その条件を満たしたあと、毎回同じ子だけが固まっているなら少し組み替える。「レギュラーだからこの車」「仲良しだから固定」という理由を配車条件にしない。これだけでかなり違う。
さらに、「友達と同じ車がいい」という希望は、空きがあれば対応する程度にしておく。絶対条件にすると配車担当が毎週ルービックキューブを解くことになる。しかも完成直前に「帰りはおばあちゃんが迎えに来ます」が飛んできて全部崩れる。ルービックキューブなら壁に投げても誰も怒らないが、配車表ではそうはいかない。
変更希望についても同じだ。安全面や家庭の事情なら変更する。一方、「いつものメンバーがいい」だけなら毎回は合わせない。この線引きをすると、「あの家庭だから通る」「控えだから我慢」という変な力関係が入りにくくなる。大切なのは完璧な公平ではなく、誰の子が上手いかによって配車担当の態度まで変わらないことだ。
もう一つの解決策は、車内で決まった話を正式決定にしないこと
同じ車の固定化が危ない理由には、情報もある。だからチーム全員に関係する予定変更や集合時間、持ち物などは、車の中で話題になったとしても正式な連絡先に必ず戻す。「昨日の車で話したから分かってるよね」は禁止でいい。分かっているのはその車だけである。車にはWi-Fiは付いていても、全保護者への自動テレパシー機能は付いていない。
誰かがコーチから聞いたなら全員に共有する。車内で日程の変更案が出ても、そこで決定した扱いにはしない。「○○号の乗員会議により来週7時集合となりました」では困る。チーム運営が国会より少人数になっている。せめて正式な情報と雑談の境界くらいは分けたほうがいい。
これをやると、「いつも同じ車に乗っている家庭だけ詳しい」という状態がかなり薄くなる。仲良しグループそのものを壊す必要はない。子どもも親も好きな人と仲良くすればいい。ただ、仲良しと運営上の優位性をセット販売しない。それだけの話である。
結論。「一軍車」をなくすのではなく、「一軍車という意味が生まれない配車」にする
スポ少で上手い子だけ同じ車になること自体を、一回見ただけで問題扱いする必要はない。家が近ければ同じになるし、人数の都合もある。ただし、それが毎回固定され、レギュラー、仲良し、親の中心グループ、情報をよく知っている家庭まで全部同じ顔ぶれになったら、一度配車の組み方を疑ったほうがいい。
解決策は、上手い子を意地でも引き離すことではない。配車を「安全・人数・移動・家庭事情」で決め、実力や親の立場を材料にしない。仲良し希望は余裕があるときだけ。全員に必要な情報は車内で終わらせない。そして同じ組み合わせが続きすぎたら、理由がなければ少し動かす。この四つで十分である。
最初の駐車場で、今日もスタメン四人が同じ車へ向かっていく。理由が「この四家庭は帰りの方向が同じ」なら何も問題はない。理由を聞いて「いや、なんとなく毎回そうだから」しか出てこないなら、次回はちょっと混ぜればいい。ミニバスでもサッカーでも野球でも、試合では選手を適材適所に配置すればいいが、駐車場までフォーメーションを維持する必要はない。
そもそも、車は上手い子を乗せても速くならない。控えの子を乗せても馬力は落ちない。レギュラー四人を積んだからといってミニバンの最高速度が上がるわけでもない。それなら配車くらい、子どもの実力とは無関係なただの移動に戻してしまえばいい。「一軍号」と「育成号」が必要なのはゲームの選手選択画面だけで十分である。
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