スポ少の試合後に親が言わない方がいい言葉7選|帰りの車で監督に変身しないために

目次
- •「なんであそこで打たなかったの?」は質問の顔をした尋問になりやすい
- •「もっと声出せたよね」は便利すぎて、だいたい何にでも使えてしまう
- •「〇〇君はできてたよ」は、励ましに見えて他人との比較を持ち込む
- •「せっかく朝早くから来たのに」は、親の苦労を子どものプレー代にしない
- •「やる気あるの?」は技術の失敗を人格の問題に変えてしまう
- •「監督も言ってたでしょ」は、親が勝手にコーチ陣へ加入する合図になる
- •一番やめたいのは「今日、全然ダメだったね」で試合を丸ごと採点すること
- •では何を言えばいいのか。「褒めなきゃ」と考えると、また面倒になる
- •親が監督になるのは、子どものプレーに親自身の不安が乗っているからだ
- •帰りの車で話すなら「親の評価→子どもの反省」ではなく「子どもの感想→必要なら会話」の順番でいい
試合終了の笛が鳴る。
子どもは汗だくで体育館から出てきて、荷物を車に放り込み、「疲れた」と言いながら座席に沈む。親もその時点では普通の親だ。「今日はよく頑張ったな」「帰りに何か食べさせるか」。まだ人格は保たれている。
問題は駐車場を出て最初の赤信号である。
親の頭の中に、頼んでもいないのに試合映像が再生される。
第2クォーター残り3分12秒。あの場面だ。
「あのさ」
来た。
この「あのさ」が出た瞬間、保護者は退任し、監督に就任する。
しかも正式な契約はない。日本スポーツ協会から認定されたわけでもない。チームから頼まれてもいない。給料も出ない。なのに戦術分析だけはNBAのヘッドコーチくらいの顔で始まる。
「なんであそこで打たなかったの?」
助手席の小学6年生は思う。
知らんがな。
試合中は監督がいる。コーチがいる。ベンチがある。
ところが試合が終わると、なぜか自家用車の運転席に「臨時ヘッドコーチ」が一人追加される。
しかも帰宅するまで解任されない。
スポ少の試合後に親が言わない方がいい言葉は、別に全部が暴言というわけではない。むしろ面倒なのは、「子どものためだから」という無敵カードを持った善意である。
善意は強い。
強すぎる。
何しろ本人が善意だと思っているので、ブレーキがない。
車にはブレーキがあるのに、親の口にはついていない。
「なんであそこで打たなかったの?」は質問の顔をした尋問になりやすい
まず第一位候補が、「なんであそこで打たなかったの?」である。
見た目は質問だ。
語尾にも「?」が付いている。
だから親は「別に責めてないよ。理由を聞いてるだけ」と思っている。
ところが実際には、正解がすでに決まっている。
正解は「打つべきだった」である。
つまりこれは質問ではない。
クイズである。
しかも出題者だけが答えを持っているタイプの、たいへん感じの悪いクイズだ。
子どもが「ディフェンスが来てたから」と答える。
すると親は言う。
「いや、でも打てたでしょ」
終了。
では「打てると思ったけどパスした」と答える。
「いや、あそこは自分で行くところでしょ」
終了。
「分からない」と答える。
「自分で考えなきゃダメでしょ」
全部不正解。
もはやクイズではない。
詰み将棋である。
後部座席に藤井聡太が乗っていても助からない。
それでも本当に聞きたいなら、「あの場面、自分ではどう見えてた?」くらいで止めればいい。
そこで子どもが「別に」と言ったら?
別にで終了である。
「別に」の奥深さを研究するのは大学院に入ってからでいい。
「もっと声出せたよね」は便利すぎて、だいたい何にでも使えてしまう
二つ目は、「もっと声出せたよね」。
これはスポ少界の万能調味料である。
負けた。
「声が足りなかったね」
動きが悪かった。
「もっと声出そう」
ベンチが静かだった。
「声出していこう」
朝、寝坊した。
「もっと声出せたよね」
いや、最後は関係ない。
便利すぎるので、親もつい使う。
なぜなら技術的なことがよく分からなくても、「声」なら言えるからだ。
ピック&ロールの守り方は分からない。
ゾーンディフェンスの細かい約束事も知らない。
オフサイドの新しい解釈も正直あやしい。
でも声なら分かる。
音量だから。
親から見て分かりやすい。
だから観客席から試合を見ていると、「もっと声出して!」だけが異常に言いやすい。
その結果、家に帰るころには、親のほうが一番声を出している。
子どもより出している。
もはやMVPである。
ただし残念ながら、その試合の登録選手ではない。
本人が「今日、全然声出せなかった」と言うなら、「そう思ったんだ」でいい。
そこで「そうそう!私も思ってた!」と秒速で食いつくと、せっかく本人が出した反省が親に横取りされる。
会話泥棒である。
「〇〇君はできてたよ」は、励ましに見えて他人との比較を持ち込む
三つ目。
「〇〇君はできてたよ」
これも親としては悪意がない。
「同じくらいの力なんだから、あなたもできるよ」
励ましたい。
可能性を伝えたい。
ただ、子ども側からすると突然知らない同乗者が増える。
〇〇君である。
本人は別の車で帰っている。
なのにこちらの車の中では、リバウンドを取り、声を出し、ディフェンスを頑張り、シュートまで決める。
大活躍だ。
帰り道だけで20得点くらいしている。
「〇〇君はちゃんと戻ってたよ」
「〇〇君は声出してたよ」
「〇〇君は最後まで走ってたよ」
もう〇〇君を養子にしたらどうか。
それくらい褒めている。
比較された子どもからすると、試合で負けたうえに、帰りの車内でもう一試合始まっている。
相手はチームメイト。
しかも審判は親。
かなり勝ち目がない。
どうしても比較したいなら、先週の本人と比べればいい。
「前よりボール触れてたな」
「今日は前より自分から行ってたな」
これなら車内に新しい選手を乗せなくて済む。
定員オーバーにもならない。
「せっかく朝早くから来たのに」は、親の苦労を子どものプレー代にしない
四つ目は、親の疲れがピークに達したときに出やすい。
「せっかく朝早くから来たのに」
分かる。
めちゃくちゃ分かる。
スポ少の朝は早い。
「集合7時」と書いてあるだけで、親は7時に行けばいいわけではない。
6時に起きる。
いや、弁当があるなら5時半だ。
水筒を作る。
ユニフォームを探す。
「靴下どこ?」と聞かれる。
知らん。
昨日履いた人に聞け。
車に荷物を積む。
兄弟も起こす。
そして集合場所に着いたら、子どもが言う。
「テーピング忘れた」
なぜ今なんだ。
前日の夜には地球上に存在していたはずだ。
こうして親は朝から一仕事どころか、すでに中小企業の物流部門くらい動いている。
だから試合で子どもがあっさりミスをすると、心のどこかから声が出る。
「こっちは朝5時半から動いてんだけど?」
でも残念ながら、親の起床時刻とシュート成功率には連動機能がない。
朝4時に起きれば3ポイントが入るわけでもない。
高速道路を100キロ運転したらフリースローが2本追加されるわけでもない。
親の苦労は本物だ。
ただ、それを試合後に請求すると、子どもからすれば突然届く身に覚えのない請求書である。
「遠征費・送迎費・早起き費・精神的負担費」
合計:活躍してください。
怖い。
スポーツ保険でもカバーできない。
親が大変なら、それは配車や当番の仕組みとして大人同士で考えた方がいい。
子どもの得点で精算しようとすると、会計処理がおかしくなる。
「やる気あるの?」は技術の失敗を人格の問題に変えてしまう
五つ目は、「やる気あるの?」
これも便利だ。
便利だが危険だ。
子どもがシュートを外した。
「やる気あるの?」
戻りが遅れた。
「やる気あるの?」
ルーズボールに飛び込まなかった。
「やる気あるの?」
親の問いがだんだん競技から精神鑑定に移っている。
しかも、この質問も正解がない。
「あるよ」
「じゃあもっとやりなよ」
「ない」
「じゃあ何で続けてるの?」
また詰んだ。
この車、逃げ道がない。
高速道路なら次のインターまで降りられない。
子どもにとっては地獄のドライブである。
本当は、疲れていたのかもしれない。
ミスが怖くなっていたのかもしれない。
コーチに注意されて縮こまっていたのかもしれない。
単純に調子が悪かったのかもしれない。
それなのに全部「やる気」に変換すると、親が急に精神論担当大臣になる。
「気持ちが足りない」
昭和の部室からタイムスリップしてきたのか。
気になるなら、「今日ちょっと元気なかった?」でいい。
そのほうが理由は出てきやすい。
「やる気あるの?」と聞いて得られる情報は、だいたい「うるさい」だけである。
口に出されない場合も含めて。
「監督も言ってたでしょ」は、親が勝手にコーチ陣へ加入する合図になる
六つ目。
「監督も言ってたでしょ」
これは親が使うと非常に強い。
自分一人では不安なので、監督を召喚する。
「もっと戻れって監督も言ってたでしょ」
「ちゃんと周り見ろってコーチも言ってたよね」
監督本人はもう体育館で片づけをしている。
なのに車内に分身がいる。
しかも運転している。
子どもからすると、本日の指導が延長戦に入った状態である。
試合中に監督。
ベンチでも監督。
試合後も監督。
車に乗っても監督。
家に着いたら動画を見ながら親監督。
四交代制である。
24時間サポートセンターか。
スポ少にそこまで手厚いアフターサービスはいらない。
さらに親は、「監督も言ってた」という言葉を使うと、自分の意見を監督公認にできる。
かなり便利だ。
「私がそう思う」より「監督も言ってた」の方が強い。
権威のレンタルである。
でも、監督が言ったことを子どもが理解しているかどうかまで、親が毎回確認する必要はない。
分からなければ、次の練習で本人が聞けばいい。
監督の言葉を復唱する係まで家庭に置くと、家がサテライト練習場になる。
リビングに作戦ボードが出てきたら、いよいよ危ない。
一番やめたいのは「今日、全然ダメだったね」で試合を丸ごと採点すること
七つ目。
「今日、全然ダメだったね」
短い。
ものすごく短い。
だが情報の破壊力が高い。
一試合の中には、走った場面もある。
戻った場面もある。
パスをつないだ場面もある。
ミスもある。
ボールに触れなかった時間もある。
ベンチで応援した時間もある。
それを親が全部まとめる。
「全然ダメ」
圧縮率がすごい。
JPEGでももう少し情報が残る。
子どもの一日がZIPファイル以下になっている。
しかも本人は、自分なりに「あそこは良かった」「ここは失敗した」と考えていたかもしれない。
そこへ親が巨大な赤ペンで「全然ダメ」と書く。
採点が雑すぎる。
先生なら保護者からクレームが来るレベルだ。
不思議なのは、親自身が仕事から帰ってきた日に、家族から「今日、仕事全然ダメだったね」と言われたらたぶんキレることである。
「見てたの?」
となる。
そう。
見てない。
でもスポ少になると、親は観客席から全部分かった気になる。
人間とは不思議だ。
では何を言えばいいのか。「褒めなきゃ」と考えると、また面倒になる
ここまで言わない方がいい言葉ばかり並べると、「じゃあ何を言えば正解なんだ」という話になる。
ここで真面目な記事なら、
「努力を認めよう」
「結果ではなく過程を褒めよう」
「ポジティブな言葉をかけよう」
となる。
急に学級通信みたいになる。
毎回そんな完璧なコメントを考えなくていい。
親も試合帰りは疲れている。
朝5時台から起きている。
駐車場で日焼けしている。
腹も減っている。
そんな人間に毎週、「自己肯定感を高める最適な言葉を選んでください」と言う方が無茶だ。
ChatGPTじゃないんだから。
普通に、
「お疲れ」
でいい。
「腹減った?」
でもいい。
「何食べる?」
むしろ強い。
スポ少の試合後、親子の会話を救う最強の言葉は、競技用語ではなく「何食べる?」かもしれない。
子ども「ラーメン」
親「昨日もラーメンだったぞ」
子ども「じゃあマック」
もう試合の話は終わっている。
平和である。
全国のスポ少家庭の半分くらいは、反省会ではなくポテトによって救われている気がする。
もちろん統計はない。
完全にこちらの願望だ。
本人が試合の話をしたければ、自分から話す。
「今日のあそこさ」
と言い出したら、聞けばいい。
それまでは車を運転する。
それが本来の仕事である。
親の役職は運転手。
ヘッドコーチではない。
親が監督になるのは、子どものプレーに親自身の不安が乗っているからだ
ただ、親が口を出したくなる理由もかなり分かりやすい。
「このままだと試合に出られないんじゃないか」
「同じ学年のあの子に抜かれるんじゃないか」
「もっとできるのに」
「今ここで言っておかないと、また同じミスをするんじゃないか」
親の頭の中では、まだ帰り道なのに来月の大会まで始まっている。
子どもは助手席でグミを食べている。
温度差がすごい。
さらに、スポ少は親同士の目もある。
隣の子が活躍する。
その親が拍手する。
自分の子はベンチ。
なぜか親の心拍数が上がる。
本人はベンチで普通に水を飲んでいる。
親のほうが戦っている。
そのうち観客席で親だけ汗をかき始める。
試合に出ていないのに。
そして帰りの車で、その焦りが「もっとこうした方がいい」に変換される。
親としてはアドバイスのつもり。
実際には、不安の宅配便である。
しかも着払い。
受取人は子ども。
帰りの車で話すなら「親の評価→子どもの反省」ではなく「子どもの感想→必要なら会話」の順番でいい
結局、試合後の車内でやることは難しくない。
A。
親から試合の採点を始めない。
「お疲れ」
終了。
いきなり終了する。
勇気がいる。
親は何か言いたくなる。
でも耐える。
赤信号でも耐える。
バックミラーに子どもの顔が映っても耐える。
第2クォーター残り3分12秒の記憶が蘇っても耐える。
B。
子どもが自分から話し始めたら聞く。
「今日さ、あそこでさ」
来た。
今度は本物の試合の話である。
ここで親が「そうそう!私も思ってた!」と割り込むと台無しなので、もう一度耐える。
スポ少の親に最も必要なトレーニングは、口を閉じる体幹トレーニングかもしれない。
C。
本人が「どうしたらいいと思う?」と聞いてきたら、そのとき初めて意見を言う。
分からなければ、
「それはコーチに聞いた方がいいな」
でいい。
知らないことを知らないと言う。
これが意外と難しい。
なぜなら親は観客席から40分見ただけで、少しバスケが分かった気になるからだ。
YouTubeを3本見た翌日には、さらに危険である。
「スペーシングがさ」
急に横文字が出てくる。
子ども「誰?」
そうなる。
Aは、親から採点を始めない。
Bは、本人が話したら聞く。
Cは、聞かれたときだけ答える。
この順番なら、タイトルの問題はかなり片づく。
親が何も話してはいけないわけではない。
親子で試合を振り返るのもいい。
「あのシュート入ったのすごかったな」
「いや、あれたまたま」
「たまたまでも2点は2点だ」
そんな会話なら楽しい。
問題なのは、子どもがまだシューズも脱いでいないうちから、親がパワーポイントなしで試合分析会を始めることである。
最後に一つだけ覚えておけばいい。
何か言いたくなったとき、
「これは子どもが今聞きたい話なのか。それとも私が今しゃべりたいだけなのか」
これだけ確認する。
後者なら、だいたい黙って大丈夫だ。
親が「今言わなきゃ」と思ったアドバイスの8割くらいは、家に着くころにはどうでもよくなっている。
残りの2割も、風呂に入るとかなり薄まる。
寝たらほぼ消える。
それで翌日の練習が普通に始まるなら、たぶんその話は最初から緊急ではなかった。
次の試合も、子どもは汗だくで車に乗ってくる。
親も運転席に座る。
そして赤信号で、また脳内ホワイトボードが出てくる。
「あの場面さ……」
そこまで出かかったら、一度口を閉じる。
ハンドルを握る。
前を見る。
監督は会場に置いてきた。
家まで連れて帰らなくていい。
あなたのチームではどうですか?
スポ少・少年団・クラブチームで実際にあった出来事や、保護者として感じていることを匿名で教えてください。ClubCoreブログの記事づくりの参考にさせていただく場合があります。
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