スポ少の配車で子どもが車酔いしたらどうする?運転手だけが背負う地味に重いプレッシャー

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日曜日の朝7時。試合会場まであと25分というところで、後部座席から聞きたくない日本語ランキング上位の一言が飛んでくる。「なんか、気持ち悪い」。さっきまで「今日勝てるかな」と元気にしゃべっていた子が、突然、窓の外を見ながら無言になっている。この瞬間、運転手の頭の中では「止まれる場所」「ビニール袋」「親の電話番号」「あと何分」「シートの素材」という、普段の人生では絶対に同時検索しない五項目が一斉に立ち上がる。
しかも乗っているのは自分の子ではない。自分の子なら顔を見れば「これは本当に吐く顔」「ただ眠いだけ」「お菓子食べすぎ」の区別がなんとなくつく。他人の子には説明書が付属していない。新品の家電ですら説明書があるのに、小学生だけ「ではよろしくお願いします」で引き渡される。スポ少の車出しとは、ハンドルを握った瞬間に運転手、添乗員、保健係、忘れ物センターの四役へ勝手に昇進させられる制度なのである。給料は出ない。昇進だけはものすごく早い。
「あと10分だから我慢できる?」は、車内で始まる危険なギャンブルである
子どもが「気持ち悪い」と言ったとき、一番やりたくなるのが「あと少しだから頑張れる?」である。気持ちは分かる。もう会場は近いし、ここで止まったら集合に遅れる。ほかの車は先に行っている。できれば胃袋にもチーム事情を理解してもらい、「本日は公式戦のため吐き気を15分延期します」と協力してほしい。しかし残念ながら胃袋はLINEグループに入っていないので、予定表を一切読んでくれない。
ここで大事なのは、車酔いとの勝負に勝つことではない。子どもが不調を訴えたら、まず安全に停車できる場所を探すことだ。運転しながら後ろを振り返り、「大丈夫?顔色見せて」と看病を始めたら、今度は前方のガードレールが「こちらも見てください」と参加してくる。車内の世話より運転が最優先。これはスポ少だからという話ではなく、自動車を運転している以上、そこだけは冗談にしてはいけない。
停車できたら、外気に当てる、楽な姿勢を取らせる、水分を少し取るなど、状態を見ながら落ち着かせる。乗り物酔いの予防薬には年齢によって服用量や服用できる年齢が決められている製品もあるため、その場で他の子用の薬を「たぶん同じくらいの体重だから半分でいいだろう」と配るのは避けたい。[出典1] スポ少の保護者は何でもやらされるが、ここで薬剤師まで兼任すると、いよいよ次は審判資格まで要求されそうである。
酔いやすい子の親が「よろしくお願いします」だけで帰ると、よろしくの中身が重すぎる
車酔いしやすい子がいること自体は問題ではない。問題は、それを知っている親と、何も知らずに車を出す親の情報量に差がありすぎることだ。「うちの子、車に弱いんですよ。よろしくお願いします」。この一言で送り出されると、運転手は笑顔で「はい」と答えながら、心の中では「よろしくの詳細資料をください」と思っている。
酔い止めは飲んだのか。本人用の袋はあるのか。どの程度で親へ連絡してほしいのか。過去にどんな酔い方をしたのか。「30分くらいなら平気だけど山道がダメ」という情報があるだけでも違う。ところが、こういう情報ほど集合場所で初めて出てくる。「あ、そういえばこの子すぐ酔うので」。そういえばで出す情報ではない。「今日、靴下左右違うので」くらいの軽さで発表されても、運転手側ではまあまあ重大ニュースである。
酔いやすいと分かっているなら、本人の家庭が準備の主体になる。必要に応じて、自分の子に合った酔い止め、袋、着替え、水分などを持たせ、子ども自身にも「気持ち悪くなったら我慢せず早めに言う」と伝えておく。運転手側には「酔いやすい」「薬は家庭で対応済み」「具合が悪くなったらこの番号へ連絡してほしい」くらいが分かればいい。これなら車出し担当は、当日朝に突然「小児科臨時分院・○○号車」を開院しなくて済む。
車内で吐かれたことより、その後の親の一言のほうが長く残る
車酔いで吐いてしまうことはある。子どもだって吐きたくて吐いているわけではないし、運転手も悪くない。ところが、ここで妙な後味を残すのが、大人同士の会話である。会場に着いて事情を説明したとき、「大変だったよね、ありがとう。車、大丈夫?」と言われれば、運転手の中ではだいたいそこで試合終了になる。
一方で、「前に座らせてもらえなかったんですか」「もう少しゆっくり走ってくれれば」と始まると、延長戦に突入する。もちろん事実確認は必要だし、危険な運転だったなら話は別だ。ただ、安全に止まり、子どもを休ませ、汚れまで処理して到着した保護者に対して、ホテルの送迎サービスみたいな品質評価を始めたら、次回の「車出せる人いますか?」に既読だけが美しく並ぶことになる。全員がスマホを壊したわけではない。学習したのである。
スポ少の配車で地味に怖いのは、この積み重ねだ。「何かあったら全部運転手の責任」「でも決める権限は特にない」「感謝は任意」「苦情は随時受付」。求人票に書いたら誰も応募しない条件なのに、保護者LINEでは普通に募集される。そして誰か一人が「出せます」と手を挙げる。人類の善意をかなり雑に扱っている。
解決策は「車酔いをなくす」ではなく、運転手の仕事を三つまでに減らすことだ
車酔い対策を考えると、「酔わない席に座らせよう」「朝ご飯を食べすぎないようにしよう」と細かい話が無限に増える。しかしチーム運営として先に決めたいのはもっと単純である。運転手の役割を「安全に運転する」「不調の訴えがあれば安全な場所で止まる」「必要なら保護者へ連絡する」の三つ程度に絞る。それ以外の準備は基本的に子どもの家庭側が持つ。これだけで、誰の仕事なのか分からない灰色の部分がかなり減る。
特に「親に連絡する基準」を完璧に作ろうとしなくていい。「子どもが休んでも改善しない」「本人がかなりつらそう」「運転手が判断に迷う」なら連絡する。それで十分だ。休日・夜間に子どもの症状への対応や受診について判断に迷った場合には、厚生労働省の子ども医療電話相談「#8000」で小児科医師や看護師に相談できる。[出典2] 何でもチーム代表に聞く必要はない。代表も人間であって、日曜朝に突然「吐き気の診断担当」に任命された記憶はないはずだ。
そしてもう一つ、配車表を作る側が「酔いやすい子だけ分かる状態」にしておくといい。ただし健康情報を保護者全員に大公開する必要はない。「○○くん車酔い注意!」と全体LINEで花火大会の告知のように流す話ではなく、その子を乗せる運転手と必要な範囲で共有すればいい。必要な人だけが知る。これで十分である。
「誰の責任か」を決めるより、「誰の仕事か」を先に決めたほうが揉めない
車酔いが起きたあとに「誰が悪かったのか」を考え始めると、話はすぐ面倒になる。運転手が悪い、親の準備が悪い、子どもがもっと早く言えばよかった。最終的には道路のカーブまで被告席に座らされる。しかし車酔いには誰か一人の悪者がいるとは限らない。だから責任追及より先に、仕事を分けておくほうが使える。
送り出す親は、酔いやすさを伝え、必要な物を準備し、本人にも早めに申告するよう言っておく。運転手は安全運転に集中し、不調が出たら安全な場所で停車する。状態が強い、長引く、判断に迷うなら保護者へ連絡する。運営側は、連絡先と必要最小限の情報を運転手が確認できるようにする。この四者分担なら、「全部車を出した人がなんとかしてください」という非常に大胆な経営方針から卒業できる。
そして、もし車内で吐いてしまったら、親はまず自分の子を心配すればいい。その次に車と運転手を気遣えばいい。「どうして酔ったのか」の検証委員会を駐車場で即日設置する必要はない。原因究明はNASAに任せるような顔をして、まず「ありがとう、大変だったね」でいい。その一言はガソリン代にはならないが、次回も車を出そうと思える程度には効く。
スポ少の配車で目指すべきなのは、「誰一人として車酔いしない奇跡の遠征」ではない。酔う子はいるし、突然具合が悪くなることもある。必要なのは、そのたびに運転手一人が「俺はいま何をすれば正解なんだ」とハンドルを握りながら人生相談を始めなくて済む状態である。
次に後部座席から「気持ち悪い」と聞こえたら、安全に止まる。様子を見る。必要なら親へ連絡する。それ以上の責任まで勝手に背負わなくていい。子どもの胃袋まで管理できる保護者がいたら、その人は配車係ではなく超能力者である。
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