仲の悪い子を同じ車に乗せてしまった…スポ少配車は人間関係まで考えるべきなのか

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配車表が完成した。運転手も決まった。定員も合っている。行きも帰りも計算した。今回は奇跡的に誰からも「帰りだけ別でお願いします」「弟も乗せられますか」「現地集合に変わりました」が来ない。配車担当はスマホを置き、「今日は人間として穏やかな夜を過ごせる」と思った。
その三十分後、LINEが鳴る。
「すみません。AとB、今ちょっと仲が悪いので別の車にできますか?」
そう来たか。
スポ少の配車は車に人を乗せる仕事だと思っていたが、どうやら違ったらしい。人間関係、家庭事情、車酔い、兄弟、帰宅時間、親同士の微妙な空気まで把握する総合商社だった。給料はゼロである。福利厚生もない。あるのは既読だけだ。
では、仲の悪い子を同じ車に乗せないところまで配車担当が考えるべきなのか。結論ははっきりしている。「明確なトラブルが予想できる場合は分ける。それ以外の“なんとなく仲が悪い”までは管理しない」でいい。配車担当は人間関係の神ではないし、子ども全員の相性を覚え始めたら次に必要なのは配車アプリではなく家系図である。
「仲が悪い」にも、昨日ケンカしただけから国交断絶まである
そもそも「仲が悪い」という言葉が雑すぎる。昨日練習で言い合いになった。最近あまり話さない。ゲームのグループで揉めた。片方が「アイツ嫌い」と言っている。この程度なら、親が深刻そうな顔をしている横で翌週には本人たちが一緒にコンビニへ行っていることもある。親だけが前週の外交問題を引きずり、当事国はすでに国交正常化している。
小学生の人間関係とはそんなものである。「絶対もう遊ばない」と宣言した翌日に「今日○○と遊んでくる」と言われる。こちらとしては「昨日の緊急首脳会談を返せ」と言いたくなるが、子どもは気にしていない。
この程度の不仲まで毎回配車へ反映し始めると大変だ。「AとBはダメ」「CとDは最近微妙」「EとFは仲が良すぎてうるさい」「GはHの隣だとテンションが上がる」。最終的にはExcelでは足りない。捜査本部の壁に貼る赤い糸が必要になる。
だから、一時的なケンカや「なんとなく合わない」程度なら原則そのままでいい。子どもが同じチームにいる以上、練習でも試合でも完全に避け続けることはできない。配車だけ完璧に隔離しても、体育館に着いた三分後には同じベンチに座っている。何のための大移動だったのか分からない。
ただし、後部座席で第三次世界大戦が始まりそうなら分けたほうがいい
もちろん、全部「子ども同士で何とかしろ」で済ませるのも違う。継続的にからかいがある、過去にも揉めている、片方がかなり嫌がっている、車内で言い争いになる可能性が高い。そこまで分かっているなら、わざわざ同じ車に乗せる意味はない。
車は逃げ場がない。体育館なら少し離れられるが、後部座席では右に苦手な相手、左にドア、前には運転手である。しかも高速道路を走行中に「やめろよ」「お前が先にやったんだろ」が始まると、運転手は突然、時速80キロで走る学級会の担任になる。
運転手は安全運転をするために車を出しているのであって、バックミラー越しに仲裁するために朝六時から起きたわけではない。「そこまで分かっているなら別にする」。これは過剰な配慮ではなく、単なる事故防止に近い。
線引きは「仲が良いか悪いか」ではない。「同じ車に乗せたとき、移動そのものに支障が出そうか」である。ちょっと気まずい程度なら乗る。車内で揉めそうなら分ける。この基準にすると、配車担当が週末ごとに児童心理分析官へ転職しなくて済む。
本当の地獄は、配車完成後に新しい設定が追加されることだ
この問題で配車担当が最も疲れるのは、仲の悪い子がいることではない。完成後にそれを知ることである。木曜日に出欠を確認し、金曜日に車を整理し、座席を数え、兄弟同乗を入れ、ようやく完成。「配車決まりました」と送った直後に「実は……」が始まる。
この「実は」が強い。
「実はAとBが……」「実は帰りだけ……」「実は祖母が……」「実はうちの子、○○さんの車だと……」。一つの「実は」が配車表へ着弾すると、一台移動して終わりではない。Aを2号車から3号車へ動かす。3号車が満員になる。Cを1号車へ移す。するとCの家から「帰りは別です」。配車担当だけが一人でテトリスを始める。
しかも依頼した側には悪気がない。「そこまで言うほどではないと思っていた」「本人から今聞いた」「迷惑をかけたくなくて言わなかった」。その気遣いはありがたい。ありがたいが、その結果、迷惑は完成後に最大サイズで届いている。プレゼント包装までされている。
だから解決策の一つ目は、人間関係を全部把握することではない。「配車に影響する事情は、配車表を作る前に申し出てもらう」と決めることだ。
「苦手な子アンケート」は絶対に始めないほうがいい
では毎回、「一緒に乗りたくない子がいたら教えてください」と聞けばいいのか。これはやめたほうがいい。そんなアンケートを始めた瞬間、配車担当の仕事が別競技になる。
「別に嫌いではないけど、できれば違う車で」「本人に聞いたら○○とはちょっと……」「うちの子は誰でも大丈夫ですが、○○ちゃんが嫌がるかもしれません」。頼んでもいない代理証言まで集まり始める。国会の参考人招致みたいになってくる。
人間は選択肢を出されると選びたくなる。「苦手な子を書いてください」と言われれば、今まで気にしていなかったのに一人くらい探し始める。ホテル予約で「枕の硬さを選べます」と言われると、急に自分が枕にこだわる人間だった気がするのと同じである。
聞くなら、「配車上、事前に配慮が必要な事情がある場合は個別に連絡してください」で十分だ。車酔い、人間関係、体調、そのほか必要な事情だけ申告してもらう。何も連絡がなければ通常どおり組む。これなら配車担当は配車だけをすればよく、子ども同士の好き嫌いランキングを管理しなくて済む。
変更してほしいなら、依頼した側にも少しだけ宿題を持ってもらう
二つ目の解決策は、完成後の変更を全部担当者に丸投げしないことだ。「この二人を別にしてください」とだけ送ると、その後の計算はすべて配車担当になる。お願いする側は十五秒、直す側は二十分。この圧倒的な労働時間格差を放置すると、配車係はだんだんLINE通知を見るだけで血圧が上がる。
緊急性が低い変更なら、「可能なら○○さんと入れ替われないかこちらでも確認する」「帰りはこちらで迎えに行く」と、依頼した側にも調整へ参加してもらえばいい。もちろん深刻な人間関係の問題や安全上の事情なら別で、そこを本人同士の交渉にする必要はない。
要は、軽い希望変更まで全部「係の人が何とかしてくれる」にしないことだ。レストランで「窓際がいいです」と言う程度の希望ならまだ分かるが、スポ少ではそこから「窓際の席を作るために隣の店を動かしてください」くらいの作業が発生する。
お願いする人が悪いのではない。仕組みとして、頼めば誰かが全部やってくれる状態にすると、誰でも頼むようになる。それは人間として普通である。そして普通の人間が十人集まると、一人の配車担当だけが異常に忙しくなる。
最終的には「この三段階」だけで判断すればいい
配車担当が覚えるのは全員の人間関係ではなく、三段階で十分だ。
まずA。「ちょっと仲が悪い」「昨日ケンカした」「最近話していない」。これは原則そのまま乗せる。ここまで毎回分け始めると、翌週には関係が戻っている可能性もあるし、配車担当が追いつかない。
次にB。「継続的なトラブルがある」「本人がかなり嫌がっている」「保護者や指導者も事情を知っている」。これは可能なら分ける。わざわざ火のついた炭と着火剤を同じ箱に入れる必要はない。
最後にC。「車内で揉める可能性が高い」「運転の安全にも影響しそう」「怖がっているなど明確な事情がある」。これは分ける。ここまで来ると“気遣い”ではなく、安全管理の話になる。
つまり解決策は、「全員の人間関係を把握する」ではない。「移動に支障があるレベルだけ事前申告してもらい、重大度に応じて分ける」である。これなら判断基準が毎回ブレない。
配車担当が一番やってはいけないのは、察する能力を上げることだ
スポ少では、仕事のできる保護者ほど危険である。一度うまくやると、次から「○○さんなら分かってくれる」となる。事情を聞く前に察し、返信がなければ個別に確認し、子どもの相性まで覚える。気づけばその人だけがチームの裏事情データベースになっている。
そして翌年、その人が卒団すると全員が困る。「去年は自然にうまくいっていたのに」と言うが、自然ではない。一人が人力で全部吸収していただけである。電子レンジの裏でハムスターが全力疾走していたようなものだ。
だから、配車担当の能力を上げるより、察しなくても回る形にしたほうがいい。「配慮が必要な事情は事前申告」「軽い不仲は原則そのまま」「重大な事情は分ける」「完成後の軽微な変更は依頼側も調整に参加」。この四つだけでも、担当者の頭の中に秘密の人物相関図を作らずに済む。
「気が利く人がやればいい」は聞こえはいいが、気が利く人だけが毎回疲れる魔法の言葉でもある。スポ少には魔法使いはいない。たまにいるように見えるが、だいたい寝不足の保護者である。
仲の悪い二人を同じ車にしただけで、配車担当が謝り倒す必要はない
最初のLINEに戻ろう。「AとB、今ちょっと仲が悪いので別の車にできますか?」と来たとする。
まず聞けばいい。「同じ車だと揉める可能性があるほどなのか、それとも最近少し気まずい程度なのか」。前者なら変える。後者なら基本はそのままでもいい。事情を知らずに組んだ担当者が「申し訳ありません、気づかなくて」と土下座モードに入る必要はない。そこまで気づけたら配車係ではなく超能力者である。
そして次回から、「配車上の配慮が必要な事情は作成前までに個別連絡」と一文入れる。これが三つ目であり、最も効く解決策だ。人間関係を完全に解決するのではなく、配車担当へ情報が届くタイミングを決める。これだけで完成後の大改造は減らせる。
スポ少配車で考えるべき人間関係には限界がある。明確に揉める可能性があるなら分ける。一時的な好き嫌いまでは追いかけない。必要な事情は事前に申告してもらう。完成後の軽い希望変更は、頼む側も調整に参加する。
それでも「誰と誰が今週仲悪いんだっけ」と毎晩考え始めたら、もう配車担当の仕事ではない。
そのときは配車表を閉じて寝たほうがいい。子どもたちは翌朝、昨日まで仲が悪かった相手と同じ車に乗り込み、後部座席で普通にお菓子を交換しているかもしれない。親だけが深夜まで悩んでいたことなど、たぶん誰も知らない。
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