大会会場で“ずっと一緒にいる親”と“絶対群れない親”の評価はなぜ分かれるのか|スポ少保護者の距離感問題

大会会場で“ずっと一緒にいる親”と“絶対群れない親”の評価はなぜ分かれるのか|スポ少保護者の距離感問題

土曜日の朝、大会会場に着く。子どもは体育館に入るなりアップを始め、親は体育館に入るなり人間関係を始める。子どもの試合開始は9時30分だが、親の大会は8時07分には開幕している。開会式なし、審判なし、ルール説明なし。それなのに、なぜか全員なんとなく採点されている。

入口付近には、いつもの親たちが集まっている。「おはよー」「寒いねー」「今日早かったねー」「眠いねー」。全部、見れば分かる。気温は寒いし、朝は早いし、人は眠い。誰一人として新情報を持っていないのに、この内容ゼロの会話を自然に5分続けられる能力が、スポ少では妙に高く評価される。下手をすると子どものドリブルより完成度が高い。

その横を、一人の親が「おはようございます」とだけ言って奥の席へ向かう。すると「あの人って、いつも一人だよね」と言われる。そりゃ一人だ。本人しか来ていない。分身でもしろというのか。逆に、いつも五人で固まっている親たちには「あそこ、いつも一緒だよね」と言われる。一人でもダメ、五人でもダメ。おそらく正解は2.7人くらいだが、そこまでいくと人間関係より先に物理学を解決しなければならない。

ずっと一緒にいれば「群れてる」。一人でいれば「付き合い悪い」。たまに一緒にいれば「都合いい時だけ来る」。早く帰れば「もう帰った」、最後までいれば「暇なのかな」。透明になれば解決しそうだが、今度は「最近見ないよね」と言われる。スポ少保護者の距離感問題は、開始10分で詰むゲームなのである。

A スポ少では「よく見かける人」が「よくやっている人」に見えやすい

大会会場には、とにかくずっといる親がいる。朝からいる。昼もいる。夕方もいる。最後の試合が終わってもいる。片付けにもいる。そのうち体育館の照明が落ちてもいそうな勢いである。もはや保護者というより備品に近い。「倉庫の鍵、あの人に聞けば分かるんじゃない?」と言われ始めるが、知らない。保護者である。施設管理者ではない。

それでも毎回姿が見えると、「いつも動いてくれる人」「面倒見がいい人」「チームの中心」と評価されやすい。本人は単に自分の子の試合を全部見たいだけかもしれないし、コンビニへ行くタイミングを逃し続けているだけかもしれない。それでも「いる」という事実は強い。スポ少保護者界では、在席時間が謎のポイントとして加算される。

一方、試合直前に来て、終わったらすぐ帰る親は不利である。前日の夜に配車を調整していても、出欠確認をしていても、大会書類を確認していても、その姿は体育館には映らない。家で「背番号9どこいった」と洗濯機の底まで手を突っ込んでいても、会場では誰にも見えない。結果、「あの家って試合だけ来るよね」となる。スポ少保護者界の人事評価制度は、かなり防犯カメラ寄りなのである。

さらに危険なのがスマホだ。大会本部と連絡していても、配車変更を確認していても、外から見れば「ずっとスマホ見てる」で終了する。反対に、パイプ椅子を一脚持って体育館を三往復していると「めちゃくちゃ動いてる人」になる。どこへ運んでいるのかは、この際どうでもいい。成果より移動距離が評価されるなら、ハムスターは即役員である。

つまり、「ずっと一緒にいる親」は実際の仕事量以上に協力的に見えることがあり、「群れない親」は見えない場所で仕事をしていても何もしていないように見えることがある。保護者同士の評価は、想像以上に目視確認でできている。「あ、今日も○○さんいる」「いるね」。野鳥観察と大差ない。

B 「仲がいい」と「集団を作っている」は、外から見るとほぼ同じに見える

いつも一緒にいる親たちは、本人たちからすると普通に仲がいいだけである。同学年で、入団時期が近く、配車で何度も一緒になった。昼になれば「コンビニ行くけど何かいる?」「コーヒー」「私も」「私はいらない」となり、「いらない」と言った人が買ってきたポテトを一番食べる。別に派閥ではない。人類によく見られる普通の仲良し集団である。

ところが外から見ると、仲良しグループと秘密結社は配置がほぼ同じだ。四人で固まり、小声で話し、突然笑う。その瞬間に別の親が横を通ると最悪である。本人たちは「昨日、旦那が洗濯物全部縮ませてさ」と話しているだけなのに、通過した側では「今、私のこと言ってた?」に変換される。人間は音声が聞こえないと勝手に字幕を付ける。そして、その字幕はだいたい悪意のある翻訳になっている。

さらに、その仲良しグループに役員や古参の保護者が混ざると、ただの雑談が突然チーム運営に進化する。「次の試合、車どうする?」「○○さん出せるんじゃない?」「たぶんいけるんじゃない?」「じゃあそれで」。出た。「じゃあそれで」。スポ少でかなり危険な日本語である。本人にまだ一文字も確認していないのに、話だけは決勝戦まで進んでいる。

翌日、LINEに「昨日お話しした通り、次回は○○さんにお願いする形で進めます」と流れる。誰と話した。どこで話した。こちらはその国際会議に招待されていない。議事録もないし、採決もない。それなのに決議だけ届く。こうなると、中にいる人からは「いつも動いてくれる頼れる人たち」、外にいる人からは「いつも勝手に決める人たち」に見える。同じ四人なのに、片方から見れば運営チーム、片方から見れば四天王である。

だから問題は「群れていること」そのものではない。仲良しグループの中だけで、情報、判断、依頼まで回り始めることだ。昼ご飯を一緒に食べるのは自由だが、そこで来月の配車まで決め始めると話が変わる。チーム運営をファミレスの常連席方式にしてはいけないのである。

C 群れない親が嫌われるのは「一人だから」ではなく、必要な時まで一人になるからだ

一方、絶対に群れない親。会場に来る、挨拶する、座る、試合を見る、帰る。美しい。無駄がない。空港の動く歩道くらい一直線である。昼も一人、移動も一人、雑談なし。保護者LINEも「参加」「不可」「了解」。文章に体温がない。天気予報アプリより簡潔である。

こういう親を見ると「もう少し付き合えばいいのに」と言う人がいる。しかし大会要項のどこにも、「昼食時、保護者は輪になり、最低三家庭の近況を共有すること」とは書いていない。そんな規則があるなら入団説明会で最初に言ってほしい。こちらも弁当と一緒に覚悟を持参する。

一人でいるだけなら何も問題はない。ところが必要な連絡まで孤高を貫くと話が変わる。「来週の出欠お願いします」既読。「車を出せる方は返信お願いします」既読。「本日締切です」既読。静かである。山奥の修行僧でももう少し返事をする。そして試合当日になると、普通にいる。担当者としては「生きてたんかい」である。

しかも子どもはユニフォーム姿で完全に試合モード。こちらは昨日まで「来るの?来ないの?車いるの?いらないの?」と一人でクイズ大会を開催していた。この親が嫌われる原因は、一人で座っていることではない。連絡まで山籠もりすることだ。一人でいる自由と、担当者をエスパーに育成することは別問題である。

逆に、普段まったく群れなくても「参加」「車出せません」「帰りのみ可能」と必要なことだけ返す親は強い。文学性ゼロ、実用性100である。そのうち「あの人、しゃべらないけどちゃんとしてるよね」というスポ少界最高クラスの称号を獲得する。「了解です🥰🙏✨」より「不可」の二文字のほうが運営担当にはありがたい。ハートはシートベルトにならないし、キラキラは乗車定員にも含まれない。

ずっと一緒にいる親が嫌われ始める瞬間は、「親切」が「監視」に変わったときだ

ずっとチームにいる親の中には、本当に親切な人がいる。「荷物持つよ」「下の子見てるよ」「帰り乗せてくよ」。神である。ところが神は、ときどき人事部長へ転職する。「今日、お母さん来てないね」「先週も途中で帰ったよね」「最近、遠征あんまり来ないね」。始まった。保護者勤怠管理システムである。

誰も頼んでいない。保護者席にタイムカードはないし、体育館入口で社員証もかざしていない。それなのに「○○さん、先月二回しか最後までいなかったよね」と妙に正確である。その記憶力があるなら、ボールの空気入れをどこへ置いたか覚えておいてほしい。

本人に悪気があるとは限らない。むしろ「忙しいのかな」「大丈夫かな」という心配から始まっていることもある。ただ、自分が毎回来ていると、それが普通に見えてくる。朝から来るのが普通、最後まで残るのが普通、遠征も全部行くのが普通、保護者ランチに参加するのも普通。普通が渋滞している。

しかし、その家にはその家の生活がある。兄弟の予定もある。仕事もある。犬もいる。犬は関係ないようで、散歩があるので意外と関係ある。自分が毎回やっていることを「保護者なら普通やること」に変換した瞬間、親切は監視になる。そして誰も任命していない「スポ少保護者出勤管理課・課長」が誕生する。もちろん無給である。誰も得していない。

逆に、群れない親が高く評価されるのは「余計な仕事を増やさない」からだ

最初は「あの人、あんまりしゃべらないよね」と言われていた親が、二年後には「あの人、楽でいいよね」と妙に評価されていることがある。何をしたのか。大したことはしていない。むしろ余計なことをしなかった。それが強い。

大会会場には、一日中しゃべれるだけの材料が落ちている。「今日○○君スタメンじゃないね」「○○ちゃん最近長く出てるね」「コーチ、あの子だけ厳しくない?」「あの家、最近車出してなくない?」「役員誰やるんだろう」。素材だけで朝の情報番組が一本作れる。司会は古参保護者、コメンテーターは事情を半分しか知らない人。取材ゼロなのに番組だけは毎週放送される。

ところが群れない親は、その番組をそもそも見ていない。だから再放送もしない。「聞いた?」と言われても「何を?」で終わる。悪口を言わないというより、素材を持っていない。情報漏えい対策としては極めて優秀である。秘密を守る一番簡単な方法は、秘密を聞かないことなのかもしれない。

さらに親同士が仲良くなりすぎると、子どもの競争が混ざる。昨日まで一緒にランチを食べて「うちの子たち仲いいよね」と笑っていたのに、今日片方だけスタメンになる。すると午後から唐揚げを取る箸の速度まで変わる。「今日○○ちゃん、長く出てるね」。普通の文章なのに、気温だけ南極である。

そのうち時計を見ながら「うち、まだ2分」と非公式出場時間測定委員会が発足する。頼んでいない。昨日まで友情、今日は競技データ分析。親同士が近すぎると、子どもの出場時間が友情の耐久試験になる。その点、最初から一定の距離を取る親は事故が少ない。車と同じである。スポ少の保護者席にも車間距離を示す白線を引いたほうがいいのかもしれない。

結局、保護者の評価を決めるのは「距離」ではなく三つの行動だ

では結局、群れればいいのか、群れなければいいのか。午前中だけ群れて、第二試合終了後から単独行動に切り替えるのか。そんな勤務シフトみたいなことを考える必要はない。見るべきなのは三つだけである。Aは必要な連絡に返事をする。Bは引き受けた仕事を突然消滅させない。Cは自分の付き合い方を他人に押しつけない。

ずっとみんなと一緒でもいい。ただし「なんで○○さん来ないの?」を始めない。一人でいてもいい。ただし「LINE見てませんでした」を毎週やらない。毎回最後までいてもいいが、それを他人の勤務時間にしない。すぐ帰ってもいいが、自分の担当まで体育館に置いて帰らない。

つまり、「群れる」「群れない」は見た目の違いにすぎない。本体は、他人に面倒を増やしているかどうかである。四六時中一緒にいても仕事を増やさない人は楽だし、一言も雑談しなくても必要なことを止めない人も楽だ。逆に、仲良しグループで勝手に物事を決める人は面倒だし、「私は群れないタイプなんで」と言って返信までしない人も面倒である。

後者は一匹狼ではない。ただの未回答者である。狼に謝ってほしい。

チームが決めるべきなのは「仲良くする方法」ではなく「どこまで関われば十分か」だ

スポ少で一番いらないのは、保護者の仲良し度査定である。「あの人最近来ないね」「いつも一人だね」「終わったらすぐ帰るね」「いつも同じ人といるね」。全部、知らんがなで終わる。子どもの試合を見に来ただけなのに、なぜ親まで生活態度を評価されなければならないのか。

次は弁当審査でも始めるのか。「今日もコンビニですか」「おにぎり一個だけですか」「唐揚げ多くないですか」「野菜少ないですね」。誰だお前は。栄養士か。試合会場で子どものシュート成功率より親のブロッコリー摂取量を気にしてどうする。

チームが決めるべきなのは、仲良くする方法ではない。出欠は返す、担当はやる、無理なら伝える、変更は共有する。ここまでが運営である。その先、一緒に座るか、一人で座るか、昼を食べるか、直帰するか、帰りにファミレスへ行って二時間しゃべるかは自由だ。保護者同士の親睦会に出場時間の規定はない。

ClubCoreも、保護者全員を仲良くするためのものではない。そんな機能が作れたら、スポ少向けサービスとして売っている場合ではない。国連に持っていく。人類が何千年も解決できていない人間関係をスマホ一つで解決できたら、たぶん翌年のノーベル平和賞はかなり期待できる。

できることはもっと地味でいい。予定や出欠、配車などの情報が「あの人に聞かないと分からない」状態を減らし、「見れば分かる」に変える。人間関係を良くするのではなく、人間関係を使わなくても済む場面を増やす。友達にならなくてもチームは回る。そのくらいの距離感のほうが、実は長持ちする。

大会会場では今日も、いつもの親たちがいつもの場所で楽しそうに話している。少し離れた席では、一人で試合を見ている親がいる。どちらが正しいか。別にどちらでもいい。必要な返事をして、必要な仕事をして、他人の距離感を勝手に採点しなければ、それで終わりである。

スポ少の大会会場は、子どもが試合をする場所だ。親まで団体戦にエントリーする必要はない。

あなたのチームではどうですか?

スポ少・少年団・クラブチームで実際にあった出来事や、保護者として感じていることを匿名で教えてください。ClubCoreブログの記事づくりの参考にさせていただく場合があります。

※個人名・チーム名・学校名など、個人や団体を特定できる情報は入力しないでください。

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