「まだ体だけだから」「うちはこれから伸びるから」|体格差のある子の親が、将来の順位予想をやめるために

「まだ体だけだから」「うちはこれから伸びるから」|体格差のある子の親が、将来の順位予想をやめるために

「まだ体だけだから、あの子」

試合後の体育館の隅。大きい子の親が、笑って言った。藤田さんは、小柄な息子の親として、反射的に返した。

「うちは、これから伸びますから」

二人とも、子どもを守っているつもりである。ところが、気づけば、来年以降の順位予想が始まっていた。今日の試合には笛が鳴ったのに、親の将来予測大会には、終了時刻がない。

「六年生の春には、きっと……」

「いや、中学になったら逆転ですよ」

「ふひゃあぁぁぁーー! 僕ら、まだ今日の試合の感想も言うてへんのにぃぃぃ!」

藤田さんは、思わず口を押さえた。二人の親が、同時に黙った。聞こえたのは、体育館の床を鳴らす、子どもたちのシューズの音だけだった。

「体が大きいと有利なのは、何年生まで?」と聞きたくなる気持ちは、分かる。ただ、競技、成長、技術、役割が違うため、全員に共通する有効期限は、決められない。大きさは、期限が印刷された割引券ではない。小学校卒業の日に効力が一斉に切れるわけでも、小柄な子に自動的に優待が移るわけでもない。

得点の理由を、一つにまとめすぎない

高い位置でボールを取ったのか。先に場所へ入ったのか。相手の動きを見てから決めたのか。同じ得点にも、複数の要素がある。体格の助けがあったとしても、本人の判断や練習まで、全部なかったことにはならない。「大きいだけ」は、説明が短く済む分、見落としも一括で済ませてしまう。

一方、勝てているから課題がないとも、限らない。届くから取れた場面と、動いて取りに行けた場面を分けて見ると、次に練習することが具体的になる。相手が同じような体格になったらどうか、別の役割ではどうかと、指導者に確かめてもよい。ただし、失敗させて本当の実力を証明する試験にはしない。子どもは、親の仮説を検証するために試合に出ているわけではない。

同じ学年というだけで、体の条件はそろわない

日本スポーツ協会の発育期のスポーツ活動ガイドは、同じ学年でも発育発達の個人差が大きいことを示している。学年別の大会で一緒に立っていても、成長の段階まで同じとは限らない。名簿の「小学六年生」は便利だが、体の進み方を統一する契約書ではない。

だから、今の身長から成人後の体格や競技の到達点を決めない。この記事でも、特定の年齢までは有利と断定しないし、個別の成長予測もしない。成長や体の状態に心配がある場合は、医療機関などに相談する。家庭で毎週メジャーを出しても、身長に締切のプレッシャーをかけることはできない。

大きい子に、同じ仕事だけを永久発注しない

今いちばん届く選手に、毎回同じ役割を頼めば、試合は回しやすい。ただ、本人が別の技術を学ぶ機会までなくしてよいかは、別の話だ。今できることと、今後経験してほしいことを、指導者に尋ねる余地はある。「チームに必要だから」で役割が固定されると、本人の履歴書が、一つの業務で埋まる。

今の役割に加えて、どんな技術を伸ばす予定でしょうか。家庭でも同じ方向で応援したいです。

文面は、実際の状況に合わせて書き換えてください。競技の方針や練習条件によって進め方は違うが、得意を使うことと、得意しか任せないことは、分けたい。体が大きい本人にも、失敗しながら初めて覚える動きがある。最初から完成品の働きを求めないことだ。

大きい子への周囲の期待も、本人には重いことがある。「その体ならできるでしょ」と言われても、体格と経験は、同じ日に納品されていない。できなかった場面を体の見た目で責めず、何を教わって何を試したかを見る。

小柄な子にも、「いつか追いつく」だけを渡さない

将来の成長は、今の困りごとへの具体策にはならない。「中学になれば」と慰め続けるより、今の条件で学べる動き、判断、技術を、指導者と考えたい。体格差のある活動での安全や負担にも、配慮する。小さいから必ず器用になる、大きい子は必ず伸び悩む、といった交換条件も、作らなくていい。

本人が比べて落ち込むなら、相手の将来を下げて慰めない。「あの子は今だけだよ」で安心させると、親子で他人の成長が止まる日を待つことになる。ずいぶん疲れる応援方法である。本人の一年前と比べて、できるようになった場面を一つ確認するほうが、今日の練習につながる。

親同士の謙遜に、子どもの将来を使わない

大きい子の親が「どうせ体だけだから」と言い、小柄な子の親が「将来はうちも」と返す。どちらも、場を丸くしたいだけかもしれない。それでも、そばで本人が聞けば、今の頑張りは評価されないのか、今はできなくても後で保証されるのかと、違う意味を受け取る余地がある。大人の社交に、子どもの競技人生を担保として出さなくていい。

褒められたら、「ありがとう。本人も喜んでいた」で終えられる。相手の子に触れるなら、実際に見た動きや工夫を具体的に話す。「この先どっちが伸びるか」の予想に進まなくても、会話は成立する。今日の体育館で、卒業後の勢力図まで合意して帰る必要はない。

家庭でも、体格を褒めるか隠すかの二択にしない。本人の持つ条件を受け入れながら、学ぶ技術を増やせばいい。背が高いことに感謝しろと言い続ける必要も、小さいから強くなれると励まし続ける必要もない。体は、毎週の反省会に提出する成績表ではなく、本人がこれからも使っていくものだ。

見るのは未来の順位より、次の経験

次の試合では、得点数に加えて、「どうやってできたか」を一場面だけ見る。次の相談では、今の役割と、次に育てる技術を、一つずつ聞く。それで十分だ。二年前の順位表を、ラミネートしてしまう前に|スポ少の序列はいつ決まる?低学年の「上手い」が高学年で変わる理由も、あわせて読みたい。

ClubCore(倶楽部コア)は、予定、出欠、配車、担当を一か所で共有するために作りました。運営の連絡を整えておくと、保護者席の会話を子どもの今日の話に戻しやすくなります。実際の画面はデモで見られます。

藤田さんの予測大会は、延長なしで閉幕した

次の試合の後。大きい子の親が、また近くに来た。

「あの、先日は、失礼しました」

「いえいえ。こちらこそ」

二人は、少しだけ笑った。それから、藤田さんは、実際に見た場面を、一つだけ話した。

「今日のあの子、最後のカバーが、速かったですね」

「ありがとうございます。本人も、練習したって言ってました」

それだけで、会話は成立した。十年後の編成会議の議題は、出なかった。

帰りの車で、息子が言った。

「お父さん、今日、僕、ステップ一個増えたよ」

「おお! どんなん?」

「あのね――」

大きい子は、今の活躍を喜んでいい。小柄な子は、今の課題を練習していい。どちらも、将来の勝ち負けを予約する必要はない。体育館に来たのは、子どもの競技を見るためだったはずである。藤田さんは、ハンドルを握ったまま、息子の話を、最後まで聞いた。

あなたのチームではどうですか?

スポ少・少年団・クラブチームで実際にあった出来事や、保護者として感じていることを匿名で教えてください。ClubCoreブログの記事づくりの参考にさせていただく場合があります。

※個人名・チーム名・学校名など、個人や団体を特定できる情報は入力しないでください。

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